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高単価広告の裏側と相場感を比較する記事のアイキャッチ

「フリーランスエンジニアで月100万」の広告は、なぜ嘘なのか

SkillSheet-Port編集部
SkillSheet-Port編集部
2026-03-2410分で読める

SNSを開くと、「フリーランスエンジニアになって月収100万!」みたいな広告が流れてくる。Instagram、X(旧Twitter)、YouTube。どこにでもいる。

あれ、ほぼ嘘だ。

正確に言うと「嘘ではないけど、99%の人には再現性がない話」を、さも誰でも達成できるかのように見せている。自分はSESエージェントとして現場を見てきた立場から、今日はこの話をちゃんとする。

広告に踊らされてフリーランスになって「思ったより稼げない」と苦しむエンジニアを何人も見てきた。そうなる前に、リアルな数字を知っておいてほしい。


SNSの「月収100万」広告は、ほぼアフィリエイトだ

まず、あの手の広告がなぜ大量に存在するのかを話す。

答えはシンプル。
フリーランスエージェントの紹介アフィリエイトで稼げるからだ。

構造はこうなっている。
「プログラミングスクールに通う → 半年で実務経験を積む → フリーランスになる → 月収100万」。この"黄金ルート"をブログやSNSで発信して、途中にエージェントやスクールの紹介リンクを貼る。読者がそのリンクから登録すれば、紹介者に報酬が入る。

つまり、記事を書いている本人は「エンジニアとして月100万稼いでいる」のではなく「月100万稼げるという記事を書いてアフィリエイトで稼いでいる」のだ。

実際、「月収100万」を謳っている個人ブログのリンクを見ると、A8やfelmat等のアフィリエイトリンクが並んでいる。経験15年、20年のベテランエンジニアから見れば、実務半年でリードエンジニアになれるわけがないと一発でわかる話だ。

でも、業界を知らない人は信じてしまう。だからこそ、リアルな相場を知ることが大事になる。


SES市場のリアルな単価相場を話す

ここからは、実際の調査データをもとに話す。エージェントのポジショントークではなく、公開されている数字だ。

ただし、数字を見る前に知っておくべき重大な前提がある。

レバテックフリーランスやフリーランススタートが公開している「単価相場」は、案件の提示単価だ。つまり、**クライアント企業がエージェントに支払う金額。**エンジニア本人が受け取る金額ではない。

ここからエージェントのマージンが引かれる。誰も教えてくれない数字のトリックが隠されている。

このマージン率は非公開のエージェントがほとんどだが、業界の実態としては2〜5割程度。商流が深い(間に複数の会社が挟まる)案件ほど、エンジニアの取り分は減る。

たとえば、提示単価が80万円の案件でも、マージン25%なら手元は60万円。マージン40%なら48万円。同じ「80万円の案件」でも、エージェントの構造によってエンジニアの受取額に10万〜30万の差が出る。

ネット上に出ている「平均単価○○万円」という数字は、エンジニアの手取りではなく、業界の流通価格だ。 ここを理解した上で、以下の数字を見てほしい。


まず全体感。フリーランスエンジニアの月額平均単価(案件提示ベース)は約74〜78万円。これはフリーランススタート(エン・ジャパン運営)の2025年12月度レポートで、月額平均単価78.3万円と報告されている数値だ。

「78万円」。これが案件提示ベースのど真ん中。ここからエージェントマージンを引くと、エンジニアの受取額は実質55〜65万円あたりがボリュームゾーンになる。

この時点で、広告が言う「月100万」がどれだけ遠いかわかると思う。

ただ、この平均値はあくまで全体のならし。実際は「何の言語を書くか」「どのポジションか」「どの業界か」で相場が大きく変わる。ここを深掘りする。

言語別の単価——「何を書けるか」で相場が変わる

レバテックフリーランスが公開している単価相場データを見ると、言語ごとの差がかなりはっきりしている。以下の数字はすべて案件提示ベース(=エージェントマージン控除前)だ。

高単価ゾーンにいるのは、Go言語(平均83万円)、Scala(平均83万円)、Ruby(平均81万円)。いわゆるモダン言語だ。需要に対して経験者が少ないから単価が上がる。

意外と見落とされがちなのが、モバイルアプリ開発系の言語。Kotlin(平均80万円)、Swift(平均79万円)。iOS/Androidのネイティブアプリを書けるエンジニアは実は希少で、Web系より単価が高いケースが多い。

一方、Java(平均68万円)は案件数こそ圧倒的No.1だが、平均単価は中堅どころ。「Javaできます」だけでは月100万にはまず届かない。PHP(平均71万円)、JavaScript(平均70万円)もWeb系の王道だが、同じ水準だ。

そしてレガシー系。COBOL(平均60万円)、VB.NET(平均61万円)、VBA(平均61万円)。案件は安定して存在するが、単価は低めに落ち着く。

つまり、「何の言語をやっているか」だけで、スタートラインに10〜20万の差がつく。 月100万の広告を見て夢を膨らませる前に、まず自分の武器がどの相場帯にあるのかを知るべきだ。

言語別相場一覧

言語別相場一覧

職種別の単価——「何ができるか」で天井が変わる

次に職種。同じレバテックフリーランスのデータで見ると、ここの差がいちばん大きい。

平均単価で100万円を超えている職種は2つだけ。ITコンサルタント(平均102万円)と、ERPコンサルタント=SAPコンサル(平均102万円)。この2つだけが「平均で」100万の壁を超えている。

次いで、ITアーキテクト(平均90万円)、PM(平均87万円)、PMO(平均85万円)、PL(平均81万円)。設計やマネジメントなど「上流工程」を担えるポジションが並ぶ。

ここから下がって、アプリケーションエンジニア(平均79万円)、データサイエンティスト(平均78万円)、フロントエンドエンジニア(平均73万円)、SE(平均71万円)。

そしてプログラマー(平均66万円)、テストエンジニア(平均60万円)、ヘルプデスク(平均54万円)。

数字を並べると残酷なほど明快だ。「コードを書く」だけの仕事は提示単価で平均66万円。「設計・管理・コンサルができる」と平均87〜102万円。 同じ「エンジニア」でも、どのポジションで勝負するかで相場が40万近く開く。

繰り返すが、これは案件提示ベースの数字だ。プログラマーの提示単価66万円からマージンを引けば、手元に届くのは40〜50万円台。ヘルプデスクの54万円なら30〜40万円台になりうる。

広告が言う「月100万」は、コンサルやPMクラスの提示単価の話。しかもそこからさらにマージンが引かれる。

業界別の単価——「どこで働くか」も見落としがち

最後に業界。ここは意外と語られない。

HiPro Tech(パーソルキャリア)が2024年の案件データをもとに出した業種別ランキングを見ると、コンサルティング業界(平均104.1万円)が最も高く、次いで金融業界(平均102.1万円)、医薬品業界(平均97.1万円)、メーカー(平均95.1万円)と続く。

注目すべきは金融業界だ。前年比で15.7万円もアップしている。理由は、レガシーシステムの刷新案件が急増しているから。古い基幹システムを最新環境に移行するプロジェクトが大量に動いており、これを推進できるPMやコンサル人材が圧倒的に足りない。
金融特有のコンプライアンスやセキュリティ要件に対応できるエンジニアとなると、さらに希少。だから単価が跳ね上がる。

言語の話にもつながるが、HiPro Techの言語別ランキングではTypeScript(平均98.5万円)、Python(平均98.3万円)、Ruby(平均97.5万円)、Go(平均95.0万円)がトップ4。企業がモダン言語へのリプレイスを進めている流れが、そのまま単価に反映されている。

一方、Web制作系やSIerの下請け案件は60〜70万円台が中心。同じJavaの案件でも、金融業界なら80〜90万、Web制作系なら55〜65万。エンジニアの世界も、就職と同じで「どの業界に行くか」が年収を大きく左右する。

自分の技術スタックが市場でどの位置にあるのか。それを把握する第一歩は、スキルシートを整理することだ。Skillsheet-Port はフォーム入力で体裁が自動統一され、AI構成補助で自己PRの叩き台も生成してくれる。自分の「現在地」を知るツールとして使える。


月100万を超えるエンジニアは、実際にどんな人か

ここまでの数字を見れば、月100万がいかに「普通のライン」からかけ離れているかわかると思う。

とはいえ、月100万を超えるエンジニアが存在しないわけではない。内閣官房の調査によると、フリーランス全体で年収1000万円以上は約4%。25人に1人。少ないが、確かにいる。

じゃあ、その人たちはどんな人なのか。

ひとことで言えば、「技術+α」の掛け算ができる人だ。

たとえば、技術力×マネジメント経験。PM/PMOとして大規模プロジェクトを回せる人。要件定義からリリースまでを俯瞰できて、チームを動かせる。技術がわかるPMは市場で最も不足しているポジションのひとつだ。

あるいは、技術力×業界知識。金融系のシステムに精通していて、かつセキュリティの設計ができる。SAPの導入経験がある。医療系のデータ基盤を構築できる。業界特化のスペシャリストは代替が効かないから、単価が跳ねる。

さらに、技術力×コンサル能力。クライアントの課題をヒアリングし、技術的な解決策を提案できる。ITコンサルタントの平均単価が102万円という数字が、その価値を証明している。

共通しているのは、「コードを書く」だけで月100万に到達した人はほぼいないということ。全員が何かしらの「+α」を持っている。そしてそこに至るまでに、最低でも5年以上の実務経験を積んでいる。

月100万は、努力の天井ではない。キャリア戦略の結果だ。

職業別フリーランスエンジニア単価相場

職業別フリーランスエンジニア単価相場


「月商100万」と「手取り100万」は別世界だ

もうひとつ、広告が絶対に教えてくれないことを話す。

「月収100万」と聞いて、多くの人は手取りで100万円を想像する。だがフリーランスの「月収100万」は月商(売上)だ。しかも前述の通り、公開されている「単価相場」は案件の提示単価。ここからお金が消えていくステップが2段階ある。

第1段階:エージェントマージン。 提示単価からエージェントの取り分が引かれる。仮にマージン25%なら、提示単価80万円の案件でエンジニアの受取額は60万円。商流が深い案件でマージン40%なら48万円まで下がる。

第2段階:税金・社会保険・経費。 エージェントマージン控除後の金額から、さらに所得税、住民税、個人事業税、消費税、国民健康保険、国民年金、交通費、通信費、機材費等が引かれる。ここで約3割が消える。

具体的にシミュレーションしてみる。

提示単価80万円の案件(フリーランスの「ちょっと良い案件」レベル)の場合。エージェントマージン25%で受取額60万円。そこから税金・社会保険・経費で約3割引かれて、手取りはおよそ40〜45万円。

提示単価100万円の案件でも、マージン25%で受取額75万円。税金等を引いて手取り50〜55万円程度。

さらにフリーランスには「稼働していない月」のリスクがある。案件と案件の間に1ヶ月空けば、その月の収入はゼロだ。年間で見ると、11ヶ月稼働できれば良いほう。12ヶ月フル稼働は現実的にはかなり難しい。

広告が見せている「月100万」は、提示単価の最大瞬間風速だ。 エンジニアの手取りベースでは、その半分前後が現実。フリーランスを検討するなら、「提示単価 → マージン控除 → 税金控除 → 手取り」の3ステップで考える癖をつけてほしい。


広告に惑わされないために、自分の市場価値を知れ

ここまで読んで、「じゃあフリーランスってダメなのか」と思った人もいるかもしれない。

そうじゃない。

フリーランスエンジニアの平均月額単価78万円は、会社員エンジニアの平均年収461万円(月約38万円)と比較すれば、明らかに高い。自由度も高い。フリーランスという働き方自体には大きな魅力がある。

問題なのは、「月100万」という非現実的な期待値をもとに意思決定することだ。

大事なのは、自分の現在地を正しく知ること。自分の言語スキルは市場でどの位置にあるのか。自分の経験年数ならどの単価帯が妥当なのか。どのポジションを目指せば単価が上がるのか。

その第一歩が、スキルシートの棚卸しだ。

自分のキャリアを客観的に整理してみると、「意外と市場価値が高かった」と気づくこともある。逆に「ここが弱い」と課題が見えることもある。どちらにしても、現状把握なしにキャリア戦略は立てられない。

エージェントが変わるたびにスキルシートを作り直すのも非効率だ。自分専用の「スキルシート管理基盤」を持っておくと、棚卸しも更新も楽になる。

▶ 無料でスキルシートを作ってみる →https://www.skillsheet-port.com/

広告の数字に振り回されるな。自分の市場価値は、自分で把握するものだ。

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