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SESエージェントの裏側——マージン・商流・選び方のリアル

SkillSheet-Port編集部
SkillSheet-Port編集部
2026-03-318分で読める

以前の記事(「フリーランスエンジニアで月100万」の広告は、なぜ嘘なのか)で、公開されている単価相場はエージェントマージン控除前の数字であり、エンジニアの手元に届く金額はそこからさらに低くなるという話をした。

あの記事を出した後、「じゃあ、エージェントはどう選べばいいのか」という反応があった。

今回はその答えを書く。SES業界のマージン構造、商流の仕組み、そしてエージェントの選び方。エンジニアが知っておくべき「裏側」を、中の人の目線で率直に話す。


まず「マージン=悪」という理解を取り払ってほしい

最初に言っておきたいことがある。

ネット上では「マージン=中抜き=悪」という論調が多い。気持ちはわかる。自分の単価から何割も引かれていると知れば、腹も立つだろう。

だが、SES企業や仲介業という仕組みは絶対になくならない。 そしてそれには合理的な理由がある。

そもそも仲介業というのは、人類有史以来の仕組みだ。不動産、人材、貿易、金融。あらゆる分野で仲介業は存在し続けている。なぜか。

案件元の企業には、エンジニアを探すためのリソースに限りがある。採用担当の人数も、使えるネットワークも、面談に割ける時間も有限だ。だけど、自社のプロジェクトに合うエンジニアを見つけたい。だからあらゆるネットワークを駆使してマッチする人材を探す。その「探す」機能を担っているのがエージェントだ。

マージンは、その機能に対する対価。問題なのはマージンの存在そのものではなく、提供されるサービスに見合わないマージン率で運営しているエージェントだ。ここを混同すると、エージェントとの関係がすべて敵対的になってしまう。それはエンジニアにとっても損だ。


マージン率の相場を知っておく

その上で、相場は知っておくべきだ。

フリーランスエージェントの場合、マージン率の相場は10〜25%程度。マージン率を公開しているエージェントだと8〜12%というところもある。

一方、SES企業(正社員型)の場合は35〜40%が平均。ここには社会保険料や福利厚生費、営業・事務の人件費が含まれるため、フリーランスエージェントよりマージンが大きくなるのは構造上当然だ。

マージン率を公開していないエージェントが大多数という現実はある。非公開のエージェントが必ずしも悪いわけではないが、透明性の高さは信頼の指標にはなる。契約前に「マージン率の目安を教えてください」と聞くのは当然の権利だ。


「商流」がエンジニアの単価を決定的に左右する

マージンよりさらに深刻な構造問題が、商流だ。

商流とは「間に何社挟まっているか」

簡単に言うと、あなたが実際に働く現場(クライアント企業)と、あなたの間に何社の会社が入っているか。これが商流だ。

いちばんシンプルなのは、クライアントがエージェントに依頼して、エージェントがあなたを紹介するパターン。間に入る会社は1社だけ。これを「エンド直」や「1次請け」と呼ぶ。

ところが実際のSES業界では、クライアントがまず大手SIerに発注し、そのSIerがさらに別のSES企業に声をかけ、そのSES企業がエージェントに依頼して、エージェントがあなたを紹介する——というように、間に2社、3社と挟まるケースがある。これが「2次請け」「3次請け」だ。

問題は「1社挟まるごとに単価が削られる」こと

間に入る会社は、それぞれ10〜20%のマージンを取る。つまり商流が深くなるほど、エンジニアの手元に届く金額は減っていく。

具体的にシミュレーションしてみる。クライアントが月100万円の予算を組んでいるとする。

**1次請け(間に1社)**の場合。その1社が15%取って、あなたの受取額は約85万円。

**2次請け(間に2社)**の場合。最初の1社が15%取って85万。次の1社がさらに15%取って、あなたの受取額は約72万円。

**3次請け(間に3社)**の場合。同じように3社がそれぞれ取って、あなたの受取額は約61万円。

同じ案件、同じスキル、同じ仕事内容。商流が違うだけで月24万円の差が出る。 年間で約290万円。

さらに厄介なのは、自分が何次請けで働いているのかをエンジニア本人が知らないケースが多いことだ。聞いても「守秘義務で」とはぐらかされることもある。だが、ここを把握せずにエージェントを選ぶのは、値札を見ずに買い物をしているようなものだ。

商流の深さごとの受取額シミュレーション図

ベストな商流は「エンド直」とは限らない

ここで、多くのエンジニアが意外に思う話をする。

「商流は浅いほどいい。エンド直が最強」と思っている人が多い。だが、実は2次・3次あたりの商流が、エンジニアにとっていちばん心地の良い立ち位置だったりする。

なぜか。

エンド直の案件は、クライアントとの距離が近い分、エンジニアに対する要求もダイレクトに来る。契約条件の交渉も、トラブル時の対応も、すべて自分でやらなければならない。間に入ってくれる存在がない。求められる責任と技術のレベルも当然高い。

1〜2社挟まった立ち位置であれば、間に入るエージェントが「現場」と「エンジニア」の緩衝材になってくれる。単価交渉を代行してくれる。案件のミスマッチがあったときに調整してくれる。サポートが受けやすい、ちょうどいいポジションなのだ。

もし元請け直やSIer直にこだわるなら、それに付随する責任を果たせるだけの技術力を確実に提供できること。あるいは自分自身でマネジメントを行い、自衛できること。この覚悟が必要だ。それができる人にとっては、元請け直がベストだろう。だが全員がそうではない。

「エンド直こそ正義」と盲目的に信じるのは、現実を知らない人の思い込みだ。 自分のスキルとキャリアのフェーズに合った商流を選ぶことが正解だ。

そもそも案件元はなぜSESを使うのか

ここでもうひとつ、視野を広げておきたい。

「案件元が正社員を採用すればいいじゃないか」「直契約すればいいのに」と思うエンジニアもいるだろう。だが案件元には案件元の事情がある。

人が財産でもあるが、人が負債にもなり得る。 これがエンジニア業界の現実だ。

正社員を雇えば、プロジェクトが終わっても人件費は発生し続ける。技術トレンドが変われば、そのスキルセットが不要になるリスクもある。採用に失敗すれば、チームのパフォーマンスが落ちる。解雇のハードルも高い。

だからこそ、案件元は「必要なスキルを、必要な期間だけ、柔軟に確保できる」SESという仕組みを使う。エンジニアにとっても、案件と自分のスキルの流動性が高いのは魅力のひとつだ。合わない現場に一生縛られるリスクがない。

SESという仕組みそのものを否定するのではなく、その中で自分にとって最適なポジションを取る。 それがエンジニアとしての戦略だ。


エージェントは「現場に近いか」「人に近いか」で見極める

エージェントのタイプを理解する上で、もうひとつ重要な軸がある。

そのエージェントが「現場(案件元)に近いか」「人(エンジニア)に近いか」だ。

現場に近いエージェント

クライアント企業やプロジェクトとの関係が太い。案件の質は高いことが多い。

ただし、スタンスが「いかにクライアントの要望に応えるか」に寄りがちだ。結果として、エンジニアへの配慮が後回しになる傾向がある。単価交渉よりも案件充足を優先する。エンジニアの希望条件より、クライアントの要件を優先する。

人に近いエージェント

エンジニアとの関係構築を重視し、キャリアの方向性を理解した上で案件を提案してくれる。単価交渉にも積極的。参画後のフォローも手厚い。

エンジニアを尊重した立ち回りをしてくれるエージェントは、長期的に見て単価もキャリアも伸びやすい。

理想は、現場と人の両方に強いエージェント。だがそれは稀だ。自分がいまどちらを必要としているかを考えた上で、エージェントを選ぶべきだ。

現場寄りエージェントと人寄りエージェントの比較図


エージェント選びで確認すべき5つのポイント

具体的に、何を見ればいいのか。

1. マージン率は公開されているか。 公開しているエージェントは信頼性が高い。非公開でも、聞けば答えてくれるかどうかは指標になる。

2. この案件の商流は何次か。 遠慮せずに聞くべき。「エンド直ですか?」「間に何社入っていますか?」。はぐらかすエージェントは要注意。

3. 案件は自社開拓か、仕入れか。 自社でクライアントと直接契約している案件と、別のエージェント経由で仕入れた案件では、商流もマージンも根本的に違う。

4. 契約後のサポート体制。 案件紹介だけして終わりなのか、参画後のフォロー、契約更新時の交渉、トラブル対応があるのか。

5. 担当者は技術を理解しているか。 キーワードマッチで案件を流すだけなのか、技術スタックやキャリアの方向性を理解した上で提案してくれるのか。


IT業界は、全部どこかで繋がっている

最後に、もうひとつ知っておくべき事実がある。

SES・IT業界は、大小問わず全部どこかしらで繋がっている。

エージェントの営業同士は横のつながりを持っている。案件情報だけでなく、「あのエンジニアはどうだった」「あの現場はこういう雰囲気だ」という情報も共有されている。

つまり、ひとつのエージェントに対して雑な振る舞いをすると、その評判が業界内で回る可能性がある。 逆に、誠実に対応していれば「あの人はいい」という評判も広がる。

これは脅しではなく、事実だ。業界は意外と狭い。

だからこそ、エージェントとの関係は短期的な損得ではなく、長期的な信頼で考えるべきだ。

以前の記事(面談に呼ばれるスキルシートと、書類で落ちるスキルシートの違い)でも書いたが、エージェントとのやり取りの時点で面談は始まっている。そのエージェントでしか繋がらない案件や企業は実在する。

エージェントは敵ではない。賢く付き合えば、キャリアを加速させる最強のパートナーになる。

エージェントに依存しない「自分専用のスキルシート管理基盤」を持っておくことも重要だ。エージェントが変わっても、自分のキャリア情報は自分のものとして蓄積できる。Skillsheet-Port なら、フォーム入力で体裁を自動統一し、匿名公開モードで共有もできる。

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エージェントの裏側を知った上で、味方につける。それがフリーランスエンジニアの生存戦略だ。

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